爪の話を書くつもりが

爪のことを書こうかと思います。キーボードに置いた手を見ていて、思いつきました。いつも、脳内のことを、だらだらと垂れ流すだけなので、脳の外にあるもの、そして、目できちんと見えて、触れて感触の確かめられるもののことを書こうかと思いました。

 

私の手は大きいです。女性だけれど身長が170センチ近くあるという大柄な体格なので、手も大きくて当然と思われるかもしれませんが、そんなことはありません。手足が長く、手も大きいのです。手足が長いというのは自慢です。私より3センチほど背が高い友人は、手足が短くて、手も私より小さい。

 

この、身体のバランスのことを考えると、いつも思い出す人物がいて、昔の会社で一緒に働いていた、15歳ほど年上の男の人のことなのですが、ものすごく紳士で、言うことも面白くて、読んでいる本のセンスとか、休日の趣味とかも素敵な人で、仕事もできて完璧にかっこいい、と言えるくらいかっこよくて、あ、顔も好きでした。メガネをかけた知的な感じの人でした。

 

が、この人、身体バランスが非常に悪い人だったのです。顔が大きくて、手だけ長くて、足が短い。背は低くないのに、顔が長いので肩の位置が低く、足が短いので腰の位置が低いという、なんというか、パーツは悪くないのにバランスですべてが台無しになっているという、とても残念な人でした。残念な人、とまとめては失礼ですね。とにかく、かっこいいけどバランスが悪い、バランスが悪いけどかっこいい、そんな人でした。

 

でも、その人のことはすごく好きでしたけどね。恋愛的な意味ではなく、人間として。一緒に仕事していて、とても楽しかったし。今でも年賀状のやりとりをしています。

 

すでに600字も書いてしまいましたが、爪の話がいっさい出てきません。誰も私の爪の話なんて期待していないのでいいと思うのですが。

 

私は爪に何も装飾をしていません。伸びたらすぐ切る。昔、ピアノを習っていたことが関係するのかどうかわかりませんが、1週間に1回は爪を切らないと気持ちが悪いのです。旅行も、5日を超えるようなときは爪切りをもっていきます。

 

昔はネイルを塗ったり、すこし伸ばしたりしていた時期もあったけれど。今はもう、飾る気はさらさらないです。指輪もしていないし。

 

でも、たぶん指先って見られているのだろうなあ。女性らしい手先かというと、全然そんなことないです。醜くはないつもりだけど、一言で形容するなら、たぶん、たくましい手、という感じだと思います。

 

右手の人差し指には切り傷の跡があります。小学生のころに、缶詰の切り口で切りました。私のこの傷跡を、覚えていてくれる人は、世の中にいるのだろうか。私以外にこの傷跡を見て、これが私の右手だと認識できる人はいるのだろうか。

 

いないような気がする。私だけの認知にもとづく、私だけの身体。

 

ぜんぜん、爪の話じゃなくてすみません。右手の人差し指に傷のある中年女性を見かけたら、「もしかしてうさぎさんですか?」と声をかけてみてください。