父の教え

本を読むこととか、物事をよく知ってることをカッコいいと思うのは、父親がそういう人だったから。

 

高校生のときだったか、大学生になってからだったか、あるいはもう社会人になっていたのだったか。

 

場面も、お店のショーウインドウで見たのだか、テレビの画面に写ったのだか、本の表紙に使われていたのだか、何も覚えていない。

 

けど、父親が、目の前の、ロシアの、見たことのない形の、やかんのようなポットのような物体を指差して、「これ、何て言うか知ってるか?」と聞いたのだ。

 

私が知らないというと、父は、「サモワール」と言った。

 

よくそんなこと知ってるな、という以外に感想もなく黙っている私に、父は「本を読まないからだ。本には何でも書いてある」と言った。

 

本を読めば、知識が身につくのか。知識を身につけるためには、本を読めばいいのか。

 

たぶんそれ以来、私には、何のために本を読むのか、という疑問がなくなった。

 

父は、私が小学生のときに、何のために勉強するのか、という疑問もなくしてくれた。この話はまたいずれ。